電話

いっそのこともう出てくれるなと願ってしまうのは私の心の弱さである。

 

電話の呼び出し音の長さが自分の揺らぎを表してるような。

 

受話器から聞こえる声は本人の声によく似た電子音の連続と知ってから、簡単に「あいしてる」を言える。「おやすみ」が信じられない。

 

蝉の音がスピーカーに拾われないようにわたしのなきごえも拾われていない。君の心のスピーカーに乗らない。

心について

彼からの電話を心待ちにしなくなった時、私は幸せなのかそうじゃないのかよく分からない。

 

朝から雨が降っていて、気分が良くなかった。

学校終わりの空は晴れだった。

駐輪場にある大きな木の下に一人でいた。

強く風が吹いて大きな木が揺れて、葉っぱのしずくが落ちた。

だから私にだけ、もう一度雨が降った。

私の心模様を空は全部知っているような気がした。